[一般質問]平成21年 6月定例議会
○市町村の広域連携について
【質問】
現在、奈良県における広域連携のあり方をテーマに開催されています「奈良県・市町村長サミット」に対する思いや、奈良県における今後の県と市町村の連携及び市町村間の連携のあり方についてお聞きします。
【答弁】
財政的に厳しい上に、組織体制が弱体な小規模町村に対する支援のあり方が、県内の地方組織の大きな課題であり、最適な地方行政の確立を模索・議論していくとともに、新しい知恵が必要であると考えます。
現在、課題および情報の共有や市町村との連携を目的とし、あらゆる議論や勉強を定期的に行う「奈良県・市町村サミット」を開催しております。
そのなかで、県と市町村が持つ人的資源・財源・公共施設を、県全体として有効活用できないかということも含め、さらに新しい役割分担と適正な財源負担を、どの様に構築するかという目標を掲げたところであります。さらに、市町村から自主的な提言もあり、戸籍システムの共同化・消費者行政相談窓口の広域化など、具体的な作業のテーマも提示されています。今後も、市町村と知恵を出し合って、本県の実情に応じた垂直補完(県と市町村の個別の連携)と水平補完(市町村だけの連携)を組み合わせた「奈良モデル」を構築して、弱体と言われます市町村の財政と事務処理体制の支援を行ってまいります。
○児童虐待について
【質問】
地域や各関係機関との積極的な連携のもと、早期発見、早期対応に努めなければならない児童虐待に関して、奈良県における関係機関との連携体制や、県民への啓発並びに「こども家庭相談センター」の対応などについてお聞きします。
【答弁】
「県こども家庭相談センター」の体制を充実させるとともに、市町村の相談窓口の充実や児童虐待見守りネットワーク構築のため、県作成の児童虐待対応マニュアルによる研修などを実施してまいりました。また、シンポジュウムの開催や街頭啓発などを通じ、ためらわず通報や相談をしていただくための取り組み、関係機関の連携強化のためのスーパーアドバイスチームの設置、こども家庭相談センターの担当職員の増員などを行いました。今後も、児童虐待を発見しやすい立場にあるすべての方々に、理解を深め、発見と対応のスキルの向上を図っていただくため、事案を用いた実践的な研修・指導などの取り組みを展開するとともに、総合的な見守り体制づくりを行ってまいります。
○少子化対策について
【質問】
県及び国等におけるアンケート調査によりますと母親、特に専業主婦の育児不安・負担感が増えているという結果や、奈良県の専業主婦の割合は全国1位であり、また、男性有業者の帰宅時間は全国で最も遅く、家事・育児時間は、全国で5番目に短いということであります。このようなことを踏まえ、今後作成される「奈良県次世代育成支援後期行動計画」では、どのような対策を打ちだされるのかお聞きします。
【答弁】
「奈良県次世代育成支援後期行動計画」の策定にあたりましては、専業主婦の精神的な不安・負担感は、第二子出産に大きな影響を与えるだけでなく、虐待につながるケースもあることから、軽減・解消に役立つ対策について、十分検討をしていきたいと考えております。また、働く主婦も含めた共通対策、例えばワークライフバランスの推進施策、あるいは地域子育て支援策なども幅広く盛り込んでまいりたいと考えております。
○企業の活性化について
【質問】
①雇用情勢の悪化、個人消費の落ち込みなど、先行き不透明感が急速に強まっています。
県内企業に至っては、倒産・廃業などもお聞きしますが、現在における県内企業の状況についてお聞きします。
②経済効果の高い中規模企業の誘致を促進するため、本年度から拡充された優遇制度に関する、PR活動の状況や企業立地の現状をお聞きします。
【要望】
県内新規常用雇用が条件の「企業立地人材確保支援補助金」制度の活用について、関係機関に対し強く働きかけを行っていただき、雇用機会の拡大へとつなげていただきますよう要望いたします。
【答弁】
①世界的な景気後退の中で、県内の中小零細企業は極めて厳しい経営環境に直面しています。県内倒産件数は75件であり、昨年より18件・負債総額で70億6千万円の増加となっております。販売不振が59件・赤字累積が9件と不況型倒産が多い状況のなか、昨年、緊急特別対策資金を創設したところ、現在までの県信用保証協会への申込件数は合計2,564件・金額としては約360億円となっています。県といたしましては、今後とも熱意や意欲のある企業が求める支援を総合的、効果的に実施することによりまして、県内企業の経営力・開発力・販売力の強化を図ってまいります。
②ホームページやガイドブック等への掲載に加えまして、企業訪問など機会あるごとにPRに努めているところです。また、本県の企業立地の状況ですが平成20年の全国における工場立地件数が6年ぶりに減少に転じたなか、本県では前年と同数の26件となり、順調に推移しているものと考えています。今後とも、補助制度も含め、本県の魅力を内外に積極的にPRし、雇用や税収の確保につながる企業の立地を促進していきたいと考えております。
○教育行政について
【質問】
①行ける高校から行きたい高校、特色ある学校等を掲げ、生徒の能力や適性・興味・関心・進路に応じた、選択幅のある教育を展開する事を目的に始まった、県立高校の再編も5年が経過していますが、その成果と検証について、高校再編に連動している入試改革も含めてお聞きします。
②子どもたちに相応の勤労観・職業観を養い、社会人・職業人として自立していくことができるよう小・中・高校におけるキャリア教育について、どのように取り組まれているのか、県内の高校の就職状況もあわせてお聞きします。
③教職員の能力開発や意欲醸成、学校組織の活性化を図り、ひいては学校の教育力向上や人材育成に役立てることを目的とした「人事評価制度」が導入されて3年、学校の自主性・自律性が高まる上で、その教育活動等の成果を検証し、学校運営の改善と発展を目指すことを目的とした「学校評価」に対する法改正が行われて1年がたちますが、学校現場における活用と今後の取り組みについてお聞きします。
④民間の資金・経営能力・技術的能力の活用による事業コストの縮減、公共サービスの向上等の観点から、PFIを活用した学校の施設整備が全国各地で行われており、公立学校の耐震化については、迅速に進めるため、文部科学省もその取り組みを支援しております。奈良県における県立学校の早期の耐震化や施設改修など、学校施設のPFI導入についてお聞きします。
【答弁】
①県立高校における特色ある学校づくりを検証するため、高校生の学校生活などに関する意識調査を行ったところ、81.1%の生徒が「在学している学校は、入学したかった学校である」と回答しております。学校の変化としては、例えば国家資格合格率が上がったことや、英語のコミュニケーション能力を育成する教育活動が高く評価され、文部科学省から表彰されました。入試改革の成果としては、先程の意識調査において受験機会が増えることに生徒や保護者からの高い評価を得ていることがあげられます。ただ、一部の学校で競争率が高くなることについては、検討すべき課題もあると受けとめております。5年を経過して、高校再編と特色選抜の初期の目的は、おおむね達成しつつあると認識しており、今後さらに学校の特色づくりや魅力ある学校づくりを推進するとともに、入試制度の改善にも一層努力してまいります。
②小中学校では、働くことへの関心や意欲を高めるた
め、職場見学や職場体験を実施しております。
高校では、すべての学校でインターンシップを、工業系高校では企業の熟練技術者が実習指導等を行う「新ものづくり教育事業」を実施しております。なお、2009年3月の県内高校生の就職率は、前年比マイナス0.5%にとどまることにより、全国平均並の93.1%となっております。今後も、生徒が実践的な知識や技術・技能に触れ、主体的に進路を選択できるよう、キャリア教育の充実に取り組んでまいります。
③人事評価制度により、教職員は学校経営方針への理解を深め、また、管理職とのコミュニケーションを通じて、より円滑な人間関係の構築に貢献するなどの効果が認められています。一方、学校評価については、学校ごとの課題が浮き彫りになったり、教職員一人ひとりが学校運営に参画するという意識の醸成にも役立っています。さらに、保護者や地域による学校への理解・協力へと進展し、開かれた学校づくりにつなげることを目指しているところです。いずれの制度も、評価自体が目的ではなく、評価を通じて各学校の具体的な課題が明確になり、教員一人ひとりの教育力、各学校の教育力を高め、信頼される学校づくりに役立ててまいりたいと考えております。
④県立学校の耐震化事業につきましては、すでに耐震診断から耐震設計へと順次計画的に事業を進めている状況であり、この段階からPFIへの変更は難しいと考えております。しかし、PFI手法は、緊急に多額の財政負担を要する場合に大変有利なものであることから、どういうところにどういう形なら導入できるかの可能性について、今後、具体的な内容とともに、十分に研究してまいりたいと考えております。